超高エネルギーガンマ線天文台CTA

Cherenkov Telescope Array (CTA) 計画は、100台近くの解像型大気チェレンコフ望遠鏡を3-10 km2の領域に敷き詰めた大規模な超高エネルギーガンマ線(TeVガンマ線*)天文台を建設し、既存のチェレンコフ望遠鏡の10倍深い感度を達成し、エネルギー領域を数10 GeVから100 TeV領域(現在稼働中のものは約100 GeV から約10 TeV)までカバーすること(上・左図を参照)を目指す国際共同実験です。現在、銀河系内外に100以上のTeVガンマ線源が発見されていますが、CTAが実現すれば、1000を超える天体が期待できます。また、単に天体数だけでなく、CTA から得られる科学的成果は銀河系内外の様々な高エネルギー天体、宇宙線、可視赤外宇宙背景放射と銀河形成進化、さらには暗黒物質や量子重力理論の検証などの基礎物理にいたるまで、十分に期待されます(詳細はCTA-Japan Web Page)。現在、本格的な建設を始める前の望遠鏡の開発・建設が急ピッチで進んでいます。その開発を元に、プロトタイプ望遠鏡の建設が始まっており(上・右図)、2025年頃からすべての望遠鏡によるフル観測を行う予定です。日本チームでは、大型鏡を持つMAGIC望遠鏡の開発に携わった日本人メンバーの経験を生かして、CTAの大型望遠鏡LST (Large-Sized Telescope) の開発を集中的に進めています。茨城大学では、その中でも望遠鏡焦点面に用いる光検出器およびその後段に取り付けられるエレクトロニクスの開発、集光率を上げるために光検出器の前に取り付ける光学素子であるライトガイドの開発・評価(下図)、反射鏡を構成する分割鏡の開発等を中心に研究を進めてきました。

 * 1GeV = 1ギガエレクトロンボルト = 10億電子ボルト、1MeV = 1テラエレクトロンボルト = 1兆電子ボルト

現在は、望遠鏡に実際に搭載されるカメラの光検出器モジュールの組み立て・チェック(下図)、建設されたLSTの実データを用いた検出器較正や天体データの解析にも取り組んでいます。

2020年10月01日