当研究室の卒業生の加賀谷美佳さん(現・仙台高専・助教)が主著のSOI半導体を用いたコンプトンカメラの開発に関する論文が専門誌NIM Aに掲載決定となりました

 サブMeV領域のエネルギーを持ったガンマ線は宇宙で起こる様々な天体現象を調べるのに有用です。例えば、宇宙でおこる元素合成過程では放射性同位体が生成され、サブMeVのラインガンマ線が放射されるため、その強度とエネルギーが高感度に観測できれば元素合成が行われている場所やそのメカニズムを調べることができます。サブMeVガンマ線は主にコンプトン散乱を引き起こすため、この反応を用いたコンプトンカメラの開発が行われてきていますが、バックグラウンドが卓越する等の技術的な理由でまだ十分な観測が行われていません。

 当研究室ではサブMeV領域のラインガンマ線を高感度かつ高いエネルギー分解能で観測するために、SOI技術を用いた高エネルギー分解能の半導体を用いた電子飛跡追跡型コンプトンカメラの開発を仙台高専、京都大学、宮崎大学、KEK、東京大学との共同研究で行ってきました。大学院修士課程の卒業生である東条さん(2018年度卒業)、加藤さん(2019年度卒業)とともに行ってきた基礎開発に加えて、加賀谷さんが検出器シミュレーターキットGEANT 4を用いて詳細に実験結果を調べた結果、検出器設計どおりの性能が出ていることを実証できました。これにより、今後、サブMeVガンマ線に特化したSOI半導体チップの開発への足がかりを得ることができました。

Mika Kagaya, Hideaki Katagiri, Ryo Kato, Naomi Tojo, Takeshi Go Tsuru, Ayaki Takeda, Yasuo Arai, Kenji Shimazoe, Evaluating the capability of detecting recoil-electron tracks using an electron-tracking Compton camera with a silicon-on-insulator pixel sensor, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment, Volume 1062, 2024, 169213, ISSN 0168-9002, https://doi.org/10.1016/j.nima.2024.169213

2024年03月11日